スティグマについて思い切り書く

sumita-m様経由で知った(http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20091004/1254674344)小田亮様のエントリです。社民党国民新党湯浅誠さんなどが主張している「子ども手当の所得制限」について異論を唱えています(sumita-m様のエントリによると社民党は所得制限なしでもいいと意見を変えたようです)。その中にこのような議論がありました。

 最後に、「受給のスティグマ」について。これは経済学者がほとんど無視する問題ですが、社会学的には重要です。とくに日本社会のように、「自己決定・自己責任」論の強い社会では、低所得者層向けの支給を受けること自体が、低所得者に、「本当は、自分でなんとかしないといけないのに、自分は他人の世話になってしまっている」というスティグマを烙印してしまいます。
湯浅誠さんなら、生活保護を受けることなしにぎりぎりまでがんばってしまう貧困層を大勢みているはずなのに、「まるっと支援」を否定しているのはどうしてなのでしょうか。「まるっと支援」こそ、自己決定・自己責任論からくる「受給のスティグマ」を解消してくれる一つの道なのに。それが左翼の「貧困層に再分配を」という思想に反するからだというのは、左翼小児病と言われても仕方ないでしょう。

http://d.hatena.ne.jp/oda-makoto/20091003

 「受給のスティグマ」が「子ども手当の所得制限」にも発生するというのは非常にいい視点で、的確な議論だなと思いました。普段、「福祉におけるスティグマ」というのは今回の小田亮様のエントリにもある生活保護についてでよく出てきます。自己責任・自助努力が強く求められる、また「頑張れば何とかなる」「天は自ら助くる者を助く」などの理念が信じられている、それこそ日本のような社会では公的扶助を受けている、受けようとすることは他者からのバッシングの理由になるし、自分自身もそのマイナスのレッテルを内面化し、萎縮的になってしまうわけです。不正受給より「もらえる人がもらおうとしない」ことが生活保護では隠れた問題なわけです。今回の子ども手当についても所得制限をすれば同じことが起きる可能性はあります。
 余談ですが、このスティグマは公的扶助がバレやすければ非常に強くなります。たまに生活保護のお金をどう使うかをやたら文句言いたがる人が「食料品や日用品の現物支給にしろ」と言うことがあります。それがダメな理由は「融通が聞かない」他にも「現物を支給するという行為」そのものがスティグマを強化させ(例えば25日に食べ物やトイレットペーパーの支給となれば、その日にそれを持っている人は保護受給者とバレてしまう)、保護を辞退する方向へ導きます。アメリカの映画だったと思いますが、公的扶助受給者に渡されるフードスタンプ(食料専用の商品券)で買い物をしたら、それを知った夫にボコボコにされる話があったはずです。
 また、年金の財源で、全額税方式に対する社会保険方式の優位性として「直接納付によって権利意識が強まる」、要は公的扶助へのスティグマを弱められることが挙げられます。確かに、年金や健康保険の給付にも相当な税金が入っていますが、「お上に頼っている」とかいう話にはならないですよね。
 あと、個人的には、消費税というのが個人の権利意識、納税者意識を高めてくれる可能性を考えていて(どんな人だって消費はしますよね?)、それがあるなら消費税も逆進性があるとはいえ少しぐらいはいいのかなと思いますが、まあそんなことはないですよね。内税にされているのもあるでしょうが。